ギター初心者が苦手なバレーコードを容易にする『カポタスト』。しかしながら、カポタストの役割について詳しく知らない人も多いのではないでしょうか?
この記事では、ギターカポタストについて以下を解説します。
- 概要
- 使用方法
- メリット
- デメリット
- 選び方
記事後半では、おすすめのカポタストも紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
ギターカポとは
ギターカポとは『ギターに使うカポタスト』の略です。カポの正式名称は『カポタスト』。イタリア語で指板の先端を意味し、弦楽器のアクセサリーとして広く知られています。
バレーの代用をする役割
6弦からE、A、D、G、B、Eとチューニングをおこなうギターは、#や♭の多い曲では弦の押さえ方が困難です。しかしながら、そのような場合に活躍するのがカポタスト。
カポタストは、1本の指で同一フレットの複数弦を同時に押弦するバレー(もしくはセーハとも呼ばれる)の代行となるため、ギターのコードフォームの簡略化が可能です。
たとえば、ギター初心者が最初につまずくFコードは、人差し指のバレーをカポタストで代用することで3本指のみで演奏可能に。困難なコードフォームをとる必要がなくなった結果、開放弦の響きが美しくなるメリットもあります。
キーの変更をする役割
カポタストは、キーを上下させたい場合も役立ちます。通常、キー変更には複雑なコードが伴いますが、カポタストを使用すると同じコードフォームを用いて異なるキーでの演奏が可能です。
たとえば、男性が女性の曲を歌う際にキーが高いと感じても、カポタストを使用すれば容易にキーを下げられます。
その他、カポタストは曲中の転調にも迅速に対応可能です。
カポタストの種類
カポタストには様々な種類がありますが、有名なのは以下の5種類です。
- ばね式(クリップ式)
- レバー式(ギア式)
- ネジ式(スクリュー式)
- ベルトゴム式(ひも式)
- 特殊式(変則式)
上記をそれぞれ解説します。
ばね式(クリップ式)
ばね式は、クリップ式とも呼ばれるカポタストです。ばねを用いたクリップのような形状で、ネックを上下から挟み込みます。着脱が簡単で迅速にできるため愛用者が多く、低単価でギター初心者にもおすすめのカポタストです。
ばね式のカポタストは迅速なフレット移動ができ、未使用時はギターヘッドやマイクスタンドに挟むことも可能。そのため、ライブ中や曲中の急なキー変更にも対応できます。
しかしながら、ばねを使用することから操作にある程度の握力が必要です。また、ネックの締め付け具合の調整は不可なため、ネックの形状によってはチューニングがずれやすい可能性も高まります。
レバー式(ギア式)
レバー式は、ギア式とも呼ばれるカポタストです。カポタストをネックにつけたあと、握り込むように装着します。レバーを上げるとロックを解除できるため、慣れれば片手で容易に着脱可能です。
ずれにくく締め付けが一定しているためチューニングに安定感があり、プロのミュージシャンにも愛用者が多いのが特徴です。レバー式のなかでも『G7th Performance』はエリック・クランプトンが絶賛したと言われています。
しかしながら、比較的高価なものが多いというデメリットもあります。
ねじ式(スクリュー式)
ねじ式は、スクリュー式とも呼ばれるカポタストです。カポタストをネックに挟み、ねじで締め具合を調整して装着します。力を必要としないため、女性や子供でも扱いやすいのが特徴です。
押弦の強さを微調整できるため音程が安定しやすく、チューニングのズレを最小限に抑えられます。
しかしながら、装着に手間がかかるためライブには不向きです。フレット移動が手軽にできないため、曲中のキー変更には対応できません。
ベルトゴム式(ひも式)
ベルトゴム式は、ひも式とも呼ばれるカポタストです。ゴムバンドやベルトをネックに巻きつけて使用します。
豊富な種類のギターに対応可能で、ネックが傷つきにくく安価で手が出しやすいです。
しかしながら、着脱に手間を要し、チューニングの安定性が低いというデメリットがあります。
特殊式(変則式)
特殊式は、変則式とも呼ばれるカポタストです。ここまで紹介したカポタストに分類されないものを指します。
指板上を転がして使うロールタイプのカポタストや、一音ごとに押弦可能なカポタストがあり、その種類は様々です。
カポタストの使用方法
カポタストの使用方法について解説します。
カポタストを挟む
カポタストを種類に応じた方法で、フレットの間に装着します。挟む場所は、目的とするフレットから可能な限りボディに近い場所です。
カポタストは挟んだ場所が0フレットにあたり、フレットが進むにつれて開放弦の音階が上がります。
押弦する
カポタストを装着したら、通常通り演奏します。ただし、カポタストを装着した場所が0フレットであることを意識してください。
たとえば、カポタストを2フレットに装着してG♭の音を出す場合は、ローコードのEで押弦します。
通常であればバレーをしますが、カポタストを活用することで3本の指のみで演奏可能です。
カポタストを使うメリット
ギターの演奏でカポタストを使用するメリットは、以下3つです。
・質の高い演奏が可能
・キーの変更が容易
・複数ギター使用時に厚みを演出
それぞれ解説します。
質の高い演奏が可能
カポタストの使用は、質の高い演奏を可能にします。
カポタストはバレーの役割を担うため、困難なコードもオープンコードに変更可能です。バレーが苦手で音が濁りがちな人でも、オープンコードであれば簡単に押弦でき、美しい響きを奏でられます。
キーの変更が容易
カポタストを使用することで、キー変更が容易になります。
カポタストは、装着する位置の変更のみでキー変更が可能。コードフォームを変更せずとも演奏可能なので、曲中の転調にも役立ちます。
複数ギター使用時に厚みを演出
複数ギターのバンド編成時にカポタストを使用すると、音に厚みを演出することが可能です。
複数ギターで同じネックポジションの演奏をすると、類似した音を奏でる可能性が高まります。しかしながら、カポタストを使用すると音色が変化するため、トーンの違いで音の厚みを演出可能です。
カポタストを使うデメリット
ギターの演奏でカポタストを使用するデメリットは、以下3つです。
・チューニングが不安定
・甘えが生まれる
・音がつまる
それぞれ解説します。
チューニングが不安定
カポタストを装着するとチューニングが狂うため、装着後はチューニングが必要です。また、カポタスト装着後のチューニングは通常時と変わるので注意します。
カポタストを1フレットに装着した場合、6弦からF、A#、D#、G#、C、Fです。そこからボディに向かうにつれ、半音ずつ合わせる音が上がります。
甘えが生まれる
カポタストはバレーの代用を担いますが、必要以上に頼ると自分の成長が停止します。
苦手なバレーから逃げ続けた結果、いつまでたってもバレーコードが弾けないという事態を回避するためにも、カポタストを頼るのはほどほどにしましょう。
音がつまる
ギターはハイフレットを押弦するほどスケールが縮まるため、音がつまり伸びが悪くなる傾向にあります。カポタストの使用時も同様です。
しかしながら、音の響きが変化することで作曲時に新たなイメージが湧いたり、曲に合わせた雰囲気を演出できたりするというメリットでもあります。
カポタストの選び方
ギターに使用するカポタストを選ぶ際は、以下3つをおさえます。
・指板のRに合わせて選ぶ
・目的(使い方)に応じて選ぶ
・見た目や価格で選ぶ
それぞれ解説します。
指板Rに合わせて選ぶ
カポタストを選ぶ際は、指板Rに合わせて選びましょう。
指板Rは指板を横から見たカーブの曲率をさしており、Rの値が大きいものほどカーブがゆるく、小さいほどカーブがきついとされ、ギターの種類や製作者によって異なります。
Rに適したカポタストの使用は、音の響きやチューニングを安定させるため、快適な演奏が可能です。
目的(使い方)に応じて選ぶ
カポタストには様々な種類があり特徴も異なるため、目的に応じて選ぶのをおすすめします。
たとえば、演奏中の素早い着脱を重視する場合はバネ式。チューニングの正確性を求めるなら、ネジ式かレバー式が良いでしょう。
材質の違いで重量も変化するため、持ち運びの頻度も考慮します。
見た目や価格で選ぶ
カポタストを見た目や価格から選ぶのも、ひとつの方法です。
自分好みの見た目は演奏中に気持ちが高まるため、良い演奏につながります。最近はユニークなデザインも多く、サメ型やイルカ型のカポタストも販売されています。
価格は数百円〜数千円まで幅広いため、予算とも相談しましょう。
カポタストを使うときの注意
カポタストを使用する際の注意点は、以下3つです。
・垂直にカポタストを装着する
・チューニングを怠らない
・可能であれば複数本所持する
それぞれ解説します。
垂直にカポタストを装着する
カポタストをギターに使用する際は、指板に対して垂直に弦を押さえるように装着します。装着が垂直にできていないと弦が押さえられず、音程が悪くなってしまうためです。
音程以外にも、弦のびびりやミュートにもつながってしまうため、装着後は開放弦の響きチェックまでおこないます。
また、カポタストの種類によってベストな挟み具合が異なるため、普段から研究しておきましょう。
チューニングを怠らない
カポタストを装着するとチューニングが狂う場合があるため、装着後のチューニングも必要です。
加えて、締め付けが強すぎると音程が高くなります。圧力の強さにも注意してください。
可能であれば複数本所持する
可能であれば、カポタストは複数本所持しておくことをおすすめします。
カポタストは小さいため、つい忘れてしまう可能性が高いギターアクセサリーです。特にライブの開催予定がある人は、注意してください。
カポタストを複数本所持し、1本はライブ用にギターケース(もしくは鞄)に入れておくと、不測の事態に備えられます。
おすすめのギターカポ5選
ギターのおすすめカポタストを5つ紹介しますので、よろしければご覧ください。
Kyser『KG6』
カポタストの有名ブランドであるKyserが販売している『KG6』は、カラーが豊富です。こちらはアコースティックギター用ですが、エレキギター用も販売されています。片手で着脱できるバネ式なため、手軽に使用可能です。
G7th『Performance 3 ART Capo』
イギリスのブランドであるG7thから発売されている『Performance 3 ART Capo』はレバー式のカポタストです。プロにも愛用されています。アコースティックギターとエレキギターに対応しており、チューニング精度の高さが魅力。重量も約63gと軽いため、扱いやすいのも特徴です。
D’Addario『NS Capo Lite』
ニューヨークに本社を置く弦メーカーで有名なD’Addarioが販売している『NS Capo Lite』は、ネジ式のカポタストでありながら、片手操作が可能で低価格なのが魅力。頑丈な作りで軽量なので、音への影響も少ないです。弦をしっかり押さえてくれるため、びびりも少なく最初の1本におすすめです。
JIM DUNLOP『ELASTIC HEAVY DOUBLE CAPO』
ピックなどのギター小物を展開するJIM DUNLOPが手がける伸縮性のあるゴムバンド式のカポタスト。軽くて安価なため、初めて使う人にも手を出しやすいです。使うギターを選ばないので、1本あると重宝します。
D’Andrea Spider Capo SPD STD
弦ごとにカポタストを装着できる特殊式のカポタストです。両サイドから挟んで装着します。変則チューニングなどにも対応しているため、ライブ時の使用にもおすすめです。
ギターカポまとめ
ギターに使用するカポタストを略してカポと呼び、バレーコードの代用やキーの変更、音の響きを変えるときに使用します。
慣れすぎるとバレーが苦手になることもありますが、正しく使えば便利なギターアクセサリーです。
この機会に、カポタストを手に入れてはいかがでしょうか?